海外旅行先の食事が不味かった。そんな経験はないだろうか。世界遺産観光やショッピング、リゾートステイなど、目的やスタイルは違えど、旅にはいつも新鮮な発見と楽しみがある。しかし、こと食事に関しては国によって当たり外れがあることは否めない。せっかくの素敵な青い海を前にして、大雑把なグリル料理や甘くてパサついたパンばかりを食べさせられるとげんなりする。現地の人の親切で食事を奢ってもらったのに、それが不味かった時に笑顔で平らげる行為はもはや苦行。観光も大事だけどグルメだって妥協したくない。食事込みで旅なのだ。
では観光も食事も二度美味しい国はどこか。台湾?ベトナム?ハワイ?スペイン?もう国名を聞いただけで涎がでるくらいには耳たこだ。そして食い意地の張った旅好きはすでにこれらのメジャーな国は訪問済みか、いつか行くリストに登録済みだろう。この記事では、24か国を旅した私が、観光だけでなくグルメもしっかりおすすめできる、ちょっとだけマイナーな国を3つ紹介したい。
ポルトガル
日本の4分の1ほどの国土に、16の文化遺産と1つの自然遺産が登録されている(2022年2月時点)。大航海時代の栄華を感じる彫刻ぎっしりの建造物や、世界一美しいと言われるレロ書店、可愛いケーブルカーが走るリスボンの街並みに、郷愁を感じる民衆音楽のファド…見どころは数えきれないほど。治安も比較的よく、親切な人が多い印象。
ポルトガルの名物料理
海産物も肉もお酒も美味いポルトガル。適当に入ったフードマーケットだって、パンにハムにチーズにスイーツに、外すことはほぼ無い天国。お土産にはコインブラの金平糖や海産物の缶詰がビジュアルも可愛くてよい。いわしモチーフの可愛い小物もいっぱいある。
- パステル・デ・ナタ
マカオ名物のイメージのあるエッグタルトはポルトガルが発祥。サクむちっとした薄い生地に、少し焼き色の付いた卵の香り濃厚なカスタード。シナモンがかかっているものもある。店によって結構違うので、私はカフェに入る度にナタを頼んでいた。ジェロニモス修道院近くの有名なパスティス・デ・ナタは絶対に食べてほしい。小さいので一人2個買ってほしい。 - いわし
いわしは国民食。フリットもいいが、シンプルな塩焼きにオリーブオイルをちーっと垂らし、レモンをぎゃっと豪快に絞って食べるのが美味い。小ぶりなので3匹は食べる。これにヴィーニョ・ベルデ(アルコール度数控え目な白ワイン。グリーンワインとも。)を合わせてランチにすれば、昼間から幸せいっぱい。 - ポートワイン
ポルトのドウロ川沿いには、ポートワインのワイナリーが並ぶ。私はSANDEMAN(サンデマン)で試飲をしてその美味しさを知りびっくり。ちと度数は高いが、熟成によって全く異なる味わいで、素晴らしい香り。ポートワインと合わせるために売っているチョコレートと共に、迷わず夫へのお土産にした。見学コースもお洒落で、飲まない人も多分楽しめる。マディラ酒を含め、世界三大酒精強化ワインのうち2つがポルトガルにあるのだ。ちなみにお土産は半分以上私が頂いた。
ポルトガルの一押し料理
カルネ・デ・ポルコ・ア・アレンテジャーナ。長いが絶対覚えてから出国してほしい。カルネ=あさり、ポルコ=豚(ポルコ・ロッソ=紅の豚、で覚えられるね?)、アレンテジャーナ=アレンテージョ地方の、という意味で、つまり「あさりと豚肉のアレンテージョ風蒸し煮」のこと。
パプリカペーストとにんにくで漬けた豚肉を炒めて、あさりと白ワインを加えて蒸して、素揚げのサイコロ状ポテトとパクチーを和えてレモンをぎゃっとして食べる料理。書いてるだけでお腹が空いてきた。海と山の出会いが最高に美味い。白でもロゼでも好きなものを合わせればよい。
ラオス
タイとベトナムに挟まれ、大河メコンを最も身近に感じられる国。街がまるっと世界遺産のルアンパバーンと、クメール文明の遺跡であるワット・プーの2つの文化遺産がある(2022年2月時点)。…それ以外には何もない。何もないが、メコン川がある。物足りない人はタイかベトナムをセットにして行けばよい。ラオスからベトナムに移動するとあまりの都会っぷりにタイムスリップ気分が味わえるかもしれない。アンコールワットが好きな人は、より古い時代のクメール文明をラオスで感じてほしい。
ラオスの名物料理
ラオス最大のお勧めポイントは米を主食とする文化であるところだ。正確にはカオニャオと呼ばれるうるち米を蒸したもの。海外に行くと、「俺は麺でもパンでもねぇ、おまんまが食いてぇんだよ!」という気持ちになる日本人にとって、パサパサせず、もちもちで甘みのあるお米はそれだけで癒し。そしてカオニャオにベストマッチなおかず達。そこに添えられるフレッシュなハーブ。タイ・ベトナム・中国という美食国に囲まれ、フランス領だったこともあり、多方面からの影響で洗練されていると感じる。
- ラープ
炒めたひき肉やにんにく、ハーブ、スパイスの細切れをこれでもかと混ぜて作るおかず。肉バージョンと魚バージョンがあるが、日本のそぼろのようで、カオニャオの最強のお供。ルアンパバーンのレストランが主催する料理教室で作り方を習ったが、難しくないので日本でも作りたい。ただし、生のレモングラスが必須と思われる。 - カオソーイ
ラオス北部の麺料理。鶏や豚でとったスープに米の平麺、肉みそたっぷりとナッツやもやしが乗っている。見た目は担々麺のように赤いが、辛すぎずあっさりなスープで、汗だくで寺院巡りをした後の体に染みる。今食べたい。 - ビアラオ
現地の人達も大好きなご当地ビール。ラオス料理はビールにもピッタリ。テラス席でメコン川を眺めながら夕暮れとビアラオと楽しむのは至高の時間。
ラオスの一押し料理
生インゲン豆にカピ。これは料理ではないか…。北部のルアンパバーンから、南部のワット・プーに向かう道中、バスロータリーにある屋台でヌードルを食べていたのだが、付け合わせに生インゲン豆が出てきた。見た目は日本と同じく細長い緑色。ヌードルに入れてもいいし、テーブルに常設のカピというエビを発酵させてつくるペーストをつけて食べてもいい。いんげんのぎゅっとした歯ざわりに中の豆のかすかなプチプチ、野菜臭い甘みに塩辛いカピのコクが相まって、何だか分からんがやけに美味しかった。日本に帰ってKALDIにカピが売っていたのでやってみたのが、全然違う。こればかりは現地で堪能するしかないらしい。
スリランカ
インドの南東に浮かぶマンゴーの形をした小さな島。この島には6つの文化遺産と2つの自然遺産がぎゅっと詰まっている(2022年2月時点)。インドに近いが、人口の70%が仏教徒であり、日本人への感情も悪くないので、アジアの中でも穏やかに旅行できる国であると感じた。また、スリランカ出身の建築家でリゾート建築の第一人者であるジェフリー・バワが手掛けたホテルや寺院が各地にあるのも観光の楽しみ。
スリランカの名物料理
魚介料理が豊富。主食はお米で、ぱらぱら系。スパイシーな料理が多いが、ココナッツなどとの組み合わせのせいか、インド料理よりもマイルドに感じる。意外なのは、モルディブフィッシュという魚を乾燥させた、鰹節によく似た食材を出汁に使うこと。ゆえに、日本人にはとても食べやすい。油少なめ・魚・野菜・フルーツがいっぱいで、身体にいいことこの上ない。さすがアーユルベーダ発祥の地。
- スリランカカレー
とにかくカレー。毎日カレー。インドと同じ。でも味や見た目は全く違う。ご飯の周りに数種類のカレーを盛り付け、少しずつ混ぜながら食べる。混ぜ方次第で無限に味変が続くシステム。毎日食べても全然飽きない。そして、ゲストハウスのお婆ちゃんが作るカレーも美味ければ、適当に入った観光客向けレストランのカレーも美味い。みんな違ってみんな美味い。 - サンボール
出汁にも使うモルディブフィッシュをそぼろ状に炒めたもの。ライムやスパイスが効いているのだが、色はサーモンピンクで、見た目も食感も鮭フレークか桜でんぶのよう。当然カレーのトッピングにも欠かせない。サンボールは私の日本食シックの予防にかなり貢献してくれた気がする。 - 紅茶
いわゆるセイロンティー。産地ごとに名前が付いていて、紅茶好きならウバやディンブラなどの銘柄を知っているのでは。私の場合は帰国後、近所のスーパーで売っている紅茶にもスリランカの地名が書いてあることを知った始末。予習って大事よね…。
スリランカの一押し料理
パリップ・ワデ。レンズ豆を半殺しくらいに潰して、生姜やスパイスなんかを混ぜてまとめて揚げたおやつ。私はコロンボから乗った列車が永遠の途中停車をしている間、窓の外で売り込み中の男の子から購入。外サクの中ムギュで豆の歯触りも良い感じ。一緒に入っている生玉葱も合間に囓ると良い仕事をしてくれる。食べ進むと、包み紙が子供の計算用紙の再利用らしいことが判明。何というか、偉い。
終わりに
ポルトガル、ラオス、スリランカの料理を紹介してきた。白状すると、名物料理は私が現地でよく食べていたものを勝手に取り上げただけで、他にも各国それぞれ素晴らしい伝統料理があるはずだ。ごめんなさい。それでも、この記事を読んだ誰かの行ってみたい国が増えてくれたら凄く嬉しい。
私はお腹が減りましたので、この辺で。
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