大人の女性の気持ちが分かりすぎている書籍おすすめ3選

誰かに言われた言葉に無性にもやもやする時、身近な人の気持ちが分からずいらいらする時、環境が変わって上手く適応できるか不安な時、私は小説や漫画、映画の力を借りる。生活感があってリアルな主人公だと没入できて尚いい。
泣いたり、すっきりしたり、はっとさせられる、私が特にお気に入りの3つの書籍を紹介したい。大人の女性にも、大人の女性の気持ちを知りたい男性にも、これから大人になる若者にも読んでほしい。

益田ミリ「結婚しなくていいですか」

このまま結婚もせず子供も持たずおばあさんになるの?スーパーで夕食の買い物をしながら、ふと考えるすーちゃん35歳、独身。ヨガ友達のさわ子さんはもうすぐ40歳。寝たきりの祖母と母との3人暮らしで、13年間彼がいない。恋がしたい。いや、恋というより男が欲しい。女性の細やかな気持ちを優しく掬いとる、共感度120%の4コマ漫画。

書籍裏表紙より引用

この本はすーちゃんシリーズの2作目。私は1作目の「すーちゃん」を含め、益田ミリさんの漫画が大好きで、すでに読んでいた。濃い恋愛でもなく、どろどろでもなく、現実に近所にいそうな主人公達の生活。彼らがたまにふっと客観的な視点になって冷静なつぶやきをするところがツボにはまる。各作品間で登場人物がリンクするのも楽しみ。

私は31歳で結婚する前日にこの本を読んでいた。夫は理想の王子様じゃないし(じゃないどころではない)、別にひとりだって楽しい、でも世間の目も鬱陶しい…とにかくもやついていた。単にマリッジブルーだったのだ。きっとすーちゃんなら、私のもやもやをどうでもいいことにスッと昇華して葬ってくれるはず、そんな期待で読み始めた。

泣いたり笑ったりしながら読み終えた頃、私は「結婚してもしなくても、どっちでも大丈夫だな」という気持ちになっていた。期待通りだ。翌日、特に感慨もなく、でも一応めでたい気持ちで予定通り婚姻届けを提出した。「結婚しなくていいですか」は、私の結婚の思い出のひとつになっている。

奥田英朗「ガール」

わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう(表題作)。ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、話題騒然となった短編集。あなたと彼女のことが、よくわかります。

講談社BOOK倶楽部より引用

奥田英朗さんは、なんでこんなに”女子”の気持ちが分かるんだろう。この本の内容は、同僚くらいの関係性にある男性にするような話じゃない。心許して話をしてくれる女性が周りに沢山いるのか、濃厚な取材をしたのか。ぶっ飛んだオタク精神科医を描いた「インザプール」や、伝説的ミュージシャンをモデルにしたと思しき人物がうんちに翻弄される「ウランバーナの森」を読んでゲラゲラ笑っていた私は、圧倒的に共感できる主人公達の出現に完全に意表を突かれてしまった。

この本を読んだのは、私が会社でマネージャーへの昇進が決まった頃。私はIT企業に勤めるSEで、周囲は9割方男性社員。私のライン上にいる女性幹部社員と言えば、二回りは年上の統括部長たった一人で、彼女とはほとんど話したこともなかった。ロールモデル不在。これから男性や年上の部下と上手いことやれるのか?馬鹿にされない?気を使われない?…と、気が気では無かった。ネットで「女性リーダー」に関する記事を読み漁ってみたものの、いまいちピンと来ない。(女性の細やかさが必要、とか言われてもキャラじゃないし。)キャリアウーマン達のインタビュー記事を読んでも、スーパーサイヤ人としか思えない。そんな中、「ガール」を手に取った。

課長に昇進して夫の年収を超えた聖子、いつの間にか「女の子枠」から外された由紀子、友人の影響でマンション購入を計画するゆかり。境遇がリンクしすぎて共感が止まらない。私が人に言えずにいた悶々としたナニカが言語化されていく爽快感。一瞬で読み終わった。
今では、弱みも含めて私の長所、と思えるようになっている。女性のロールモデルが女性じゃなくてもいいと思っている。でも、不安だったあの頃、この本の主人公達の集合体が私のロールモデルだったことは間違いない。

コナリミサト「凪のお暇」

いつも場の空気を読むのに必死で、「わかるー」が口癖の大島凪28歳。ある日、元カレの一言がきっかけでついに過呼吸をおこして倒れてしまい…?

コナリミサト「凪のお暇」特設サイトより

黒木華さん、高橋一生さん主演でドラマ化もされた漫画。ドラマで描かれた、自分を取り戻していく凪の恋愛模様にハラハラする前半もブッチギリに面白いのだが、私が共感するのは、後半の凪と凪母の戦い。凪母は自分が実現できなかった夢を凪の人生に託すことで満たされようとしている。私の母にだいぶ似ている。シングルマザーなこと、悲観的な自分に酔い気味なことろも似ている。はっきり言って毒親だ。ここで毒親と戦ってギャフンと言わせてスッキリさようなら!…とならないところが、コナリミサトさんらしい優しさだと思う。私は序盤、「あ~母親とうまく行かない感じ、分かる~、怖いよね~」と、仲間を見つけた気分でいた。しかし最終的には「母親も人間だもの…」と、何なら母にLINEでもしようかしら、という気持ちが沸くほど人間力が高まってしまった。漫画の力、恐ろし。

なお、本筋ではないが、コナリミサトさんが描く料理シーンが好きだ。「珈琲いかがでしょう」のラテアレンジ、「宅飲み残念乙女ズ」のオリジナリティ溢れるおつまみ、「凪のお暇」でスナックの女の子が作ってくれるバナナの春巻き…。その辺にある食材を予想外の組み合わせで、食べたことない美味そうなものに仕立てる感じ…。アラフォーにもなると、”食べたことないもの”に出会う機会が激減するから、読むだけで涎。むしろコナリさんと宅飲みしたい。

最後に

人生は短いからこそ、書籍や映像の中の世界に没入することは、日常では絶対得られない経験値を手っ取り早く獲得する手段だと確信している。自分の気持ちの整理にも、自分ではない大事な人達のことを知るためにも。何より、楽しいから、ね。

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